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「てことは、それを使ってこの世を覗いていたら『偶然』俺を見つけて一目惚れしちまったわけか?」
「まぁ、それが一番妥当だと思うです。幽妃さんは忙しい人ですし、なによりルール上、閻魔はこの世には行けないのです。だからあなたと直に会うってことはありえないのですよ?」
「なるほどな」
だったら俺が幽妃のことを知らないのも当然だ。閻魔の鏡とやらでどこまで覗かれていたのかは心配だが、淋子の語る彼女の人間像を信じてみるとするか。それにしてもだ。
「どこまで飛ぶつもりだ?もう家出てからけっこう経つぞ?」
「もうちょっと待ってくださいです。入り口まで後少しですから」
「入り口?」
「はいです。あの世とこの世は直接的には繋がってないんです。壁みたいなのがあるんですね?でも、隔ててる壁が薄い場所があるんで、そこをちょこっとわたしの呪いでいじってやれば、入り口が開けるんです」
「その入り口ってのは?」
「それはですね……」
ニヤリと悪戯っ子のような笑みを浮かべる淋子。その時俺は一瞬だけ、彼女が本物の死神であることを自覚した。
「人間が怪談としてよく取り上げる場所……墓場です」
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