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殺気。
別に俺は凄腕のスパイでもなければ、熟練のハンターというわけでもない。ただの高校生だ。だがそれは俺の体全体で充分に感じることができた。
俺は横に転がり、ベッドから落ちる。枕元に置いてあるスタンドの電気を点けたその瞬間、俺がさっきまで頭を載せていた低反発枕に鋭い刃物が突き刺さった。そして次に聞こえてきたのが
「ふえぇ!?なんで避けれるですか!?」
さっきまでの殺気に似つかわしくない、気の抜けた少女の声だった。俺は体を起こし、ベッド越しに相手の方を見る。そこには床まで届く長い黒衣を纏い、その小柄な体に不釣り合いな大きさの鎌を持った気の弱そうな少女が立っていた。
おそらく俺と同い年か少し下。丸い顔を覆うように生えた黒髪は肩まで届いていない。目は髪と同じ黒。少し垂れ目。
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