墓場の空気と阿呆の天使

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俺は墓場が持つ、独特の空気が嫌いだった。墓場にいるだけで体中がむずがゆくなる、そんな気味の悪さが肌に合わなかった。だが、霊体となって来てみると何故か不思議と心地よい。そのことを淋子に尋ねると、 「もともと、人間の体は魂の方が本体なんです。その魂があの世に引っ張られてしまうのを防ぐために、肉体につなぎ止めてるんですよ。でもこういうお墓みたいなところは、あの世から引っ張る力が強くて、魂が肉体から離れようとするんです。そのせいで、あまり気分が良くないんです」 そう長々と説明された。つまり、魂をつなぎ止めている肉体が、今の俺には無いから気分が悪くならず、逆にあの世からの力を受けて気持ちが良いのか。 「だとしたら、お前はどうなんだ?」 「わたしですか?わたしも魂だけの存在なんで、こういうとこは好きですよ?」 「お前も魂だけの存在?」 「はいです。あの世にいる人たちは、みんな魂だけの存在なのですよ?」 これは驚きだ。まさにゴーストタウンだ。
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