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気まずい。非常に気まずい。幽妃が俺に一目惚れしていることが分かっている以上、俺も彼女のことを意識してしまう。だって俺は健全な『元』男子高校生だからな。それでも俺は、口を開く。
「俺に話したい事って?」
「え、えぇ、そう。あなたに話したい事があるの。でもたぶん淋子から聞いてると思う」
「あんたが俺に……その……なんだ? 一目惚れ……したって事だろ?」
「そ、そう。その事で先にあなたに謝っておかないといけない。私の勝手なわがままで、あなたを冥界に連れてきたことを」
「それに関しては俺も怒って良いよな?」
「それはもちろん、当然の権利よ。なんなら私を殴ったって構わない。私の一目惚れとかいうくだらない理由で、あなたは連れてこられたのだから」
俺はその言葉に驚いて、幽妃を見た。幽妃もこっちをまっすぐ見ていて、視線がぶつかった。
「いや……俺にはそんな趣味は無い。というより、今の言葉で怒る気も無くなった」
「どうして?」
「あんたが悪ふざけだとか、あくどい事考えて俺を連れてきたんなら、俺は迷わずぶちギレてた。だけど、あんたは本気だったしなぁ……」
「…………ゥュッ」
何か変な声が、幽妃の口から聞こえた。幽妃は変わらず俺の方を見ていたが、顔は噴火寸前みたいに真っ赤になっている。
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