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 一階ロビーのフロアを抜け、床のリノリウムのはげ駆けた階段を駆け上がる。 「何してる! 危ないぞ。早くここから出るんだ」  一足早く、目的のフロアに駆け上がった京一郎の声が、もはや息を吹き返すことは無い病棟に響き渡った。 「はぁ、何言ってんの?」  おどけたように言う、青年の手には、ビデオカメラ。 その後ろの少年と少女もまた、突然の闖入者に明らかなあざけりの表情を浮かべて笑っている。 少年たちにしてみれば、楽しい遊びの時間を邪魔されたくらいにしか感じてはいないのだろう。 すぐ後ろに暗い表情でたたずむ老婆が、両の手を突き出して少女の首に骨ばった指を巻きつけようとしているというのに・・・。 「馬鹿だ」  楓のつぶやきは、誰の耳に届くことは無い。 「ひょう・・・美人さんじゃんか。何だよ、お前らだってお楽しみ何じゃんか」 「いいから早くここを出るんだ、ここは危険なんだよ」 「ばっかじゃねぇの」 「いかれてんのか、こいつ」 「いや~、きも~い」  口々にはやしたてながら、まったく言葉に耳を貸さない少年たちの耳に、異質な音は届けられたのであろう。ついでに、ありえないものもその目に映る。
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