1ラブラブオーラははた迷惑

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「そいでね、二人にお願いがあるんだけど」 「今日は、京ちゃんとこにお泊りだから」 「それは良くわかっているんだけどね。二人が引き受けてくれないと、おぢさん、とっても困っちゃうんだよね」 「取材ですか? 楓くんは、あくまで、心霊写真の鑑定だけという約束ですよね」 「うん。そうしたいのは山々なんだけどねえ、うちも人手不足だし」 「オレだけではだめですか」 「京ちゃん」 「泊まるのは、明日。オレ、迎えに行くし・・・な?」 「でも・・・」 「いつだって、約束は守ってるだろ? オレは大丈夫だから。待てるよな」 「・・・うん」 「いいこだ」 破顔一笑。 胸がすくような、性別も年齢も問わずにひきつけられるような笑顔である。 明るすぎる、栗毛というよりも金髪に近い髪は生まれついてのものであるし、欧米人にしてはのっぺりとしているが、モンゴロイドにしては堀の深い顔立ちも、美形と呼ぶのははばかられる。けれどもいい男の部類には入るだろう。 藤堂の言うところによれば、京一郎は上等な人間ということらしい。 「今回はね、二人で行ってほしいんだな」 「編集長。約束は約束ですし、何より楓くんはまだ学生ですよ?」 「そうも言ってられないんだな。今度の取材を頼んどいた先生が、盲腸で入院しちゃったのよ。入稿日は・・・だし。今更よそに頼むわけには行かないの、キミもよくわかってるでしょ。第一さー、キミ一人で言って、何するのさ。キミ、目が利かないでしょ。もちろん霊能者先生でもないし」 藤堂の言葉に苦しげにうめいた京一郎の腕に、楓がそっと手を伸ばす。 「僕は、京ちゃんの役に立つ?」 「楓君」 上目遣いにたずねる楓の、憂いを含んだ黒い瞳にTPOも忘れて見とれてしまう。 「だったら、嬉しいな」 「楓君に傷でもつけたら、お母さんに殺されるし・・・」 「母(はは)様(さま)ね・・・」 いとしのだ~りんに生き写しの美貌に、自分から受け継いだ霊能力。パーフェクトな最愛のの息子だと、公言してはばからない中身は楓そっくりの母である。 「母様は・・・そうかもしんない」 ひっそりとつぶやく楓の言葉に、重い沈黙が訪れる。
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