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「そいでね、二人にお願いがあるんだけど」
「今日は、京ちゃんとこにお泊りだから」
「それは良くわかっているんだけどね。二人が引き受けてくれないと、おぢさん、とっても困っちゃうんだよね」
「取材ですか? 楓くんは、あくまで、心霊写真の鑑定だけという約束ですよね」
「うん。そうしたいのは山々なんだけどねえ、うちも人手不足だし」
「オレだけではだめですか」
「京ちゃん」
「泊まるのは、明日。オレ、迎えに行くし・・・な?」
「でも・・・」
「いつだって、約束は守ってるだろ? オレは大丈夫だから。待てるよな」
「・・・うん」
「いいこだ」
破顔一笑。
胸がすくような、性別も年齢も問わずにひきつけられるような笑顔である。
明るすぎる、栗毛というよりも金髪に近い髪は生まれついてのものであるし、欧米人にしてはのっぺりとしているが、モンゴロイドにしては堀の深い顔立ちも、美形と呼ぶのははばかられる。けれどもいい男の部類には入るだろう。
藤堂の言うところによれば、京一郎は上等な人間ということらしい。
「今回はね、二人で行ってほしいんだな」
「編集長。約束は約束ですし、何より楓くんはまだ学生ですよ?」
「そうも言ってられないんだな。今度の取材を頼んどいた先生が、盲腸で入院しちゃったのよ。入稿日は・・・だし。今更よそに頼むわけには行かないの、キミもよくわかってるでしょ。第一さー、キミ一人で言って、何するのさ。キミ、目が利かないでしょ。もちろん霊能者先生でもないし」
藤堂の言葉に苦しげにうめいた京一郎の腕に、楓がそっと手を伸ばす。
「僕は、京ちゃんの役に立つ?」
「楓君」
上目遣いにたずねる楓の、憂いを含んだ黒い瞳にTPOも忘れて見とれてしまう。
「だったら、嬉しいな」
「楓君に傷でもつけたら、お母さんに殺されるし・・・」
「母(はは)様(さま)ね・・・」
いとしのだ~りんに生き写しの美貌に、自分から受け継いだ霊能力。パーフェクトな最愛のの息子だと、公言してはばからない中身は楓そっくりの母である。
「母様は・・・そうかもしんない」
ひっそりとつぶやく楓の言葉に、重い沈黙が訪れる。
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