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「やっぱり、楓君は・・・」
「いや」
「だって」
「いやったら、いや。京ちゃんと一緒にいたいの。それにね、母様だって、父ちゃんが心配で幽霊屋敷の取材のお仕事に乱入してたんだって」
「そうなの?」
「あぁ。そうね」
とは、藤堂である。
藤堂と、楓の父は同期であった。
お互い、サイエンス雑誌と、文芸誌の編集を希望したのだが、何の因果か、当時はやったホラーブームに乗っかるように立ち上げられたこの編集室に配属されたのである。そのときに、美人霊能者と鳴り物入りでアドバイザーとなった楓の母が加わって、創刊から安定期(げんざい)までを支えることとなったのだ。
したがって、藤堂は楓の父が落とされて結婚にいたるところも、楓が生まれてからも知っているのである。
「光香さまには僕から連絡しておくからさ、キミたちはこれをお願い。まあ、初めての共同作業ってことで、気負わずがんばっていらっしゃい」
「・・・はあ」
「お仕事終わったら、お泊りしていい?」
「いいけど、いいけどさ。楓君、無茶しないでくれよ」
「約束するから、置いてっちゃ、いや」
何でこんなにかわいいかな。
京一郎はしみじみと思う。
藤堂は、さすが光香様の血を引いているだけに。自分の使い方を心得ていると遺伝の不思議を痛感している。
「わかった」
「京ちゃん、大好き」
大輪の花がほころぶ。
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