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「話がまとまったところで、これが詳しい資料ね。結構ご近所だから、さくさく済ませて楽しい週末。あがりは来週でいいからね」
「わかりました」
「京ちゃん、京ちゃん。ここ、僕の学校で有名だよ」
資料に添付されていた地図を見ていた楓が言う。
「肝試しするんだって」
「楓君は行ってないよな?」
つい、声を荒げてしまうのは、それがいかに危険かを身をもって知っているからである。
「まさか・・・そんなの見飽きてるし。第一、僕はそんなに子供じゃありません」
つーん。
ファイルを抱えたまま、京一郎に背を向けて歩き出す。
藤堂は、その顔がとても楽しそうな笑顔であることに気がつき、そしてデジャブを覚えた。
「待って、待ってくれよ。楓君」
あわてて後を追いかける京一郎をほほえましく見送ったとき、その根源に思い当たった。
「光香さま、まんまじゃん。見たことあると思ったら・・・」
今をさかのぼること十九年前。
今と全く同じ光景を見たことを思い出したのだ。
藤堂は、なんだか複雑な表情でぼさぼさの頭をかいて少し笑った。
「おじさん、一瞬自分が若返ったような気がしちゃったよ」
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