包囲

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「うぉっ!!…」 俺は直ぐさま、頭を窓側の方に移動させた… ヒュンッ!… 黒い光は俺の右頬をかすめる様に通り過ぎ、宙を切り裂いた。 熱い物が頬を流れ落ちる… 「ちょっ!何事よ!?」 「とにかく撃つんだ!!」 皆は一斉にトリガーを引き、天井をぶち抜いた… 天井に沢山の穴が開き、そこから光りを漏らす… しかし、先程の攻撃をして来た者には当たっていない様だ… 「…っ!何で当たらないのよ!」 エルザは目茶苦茶に弾を散らばせる様に撃ち続けている。 そこに更に奴が攻撃を仕掛けて来た… 今度は前の席にいる男達の方だ… 「…この野郎!」 男はいち早く銃を天井から生えてる凶器に向かって弾を乱射した。 続く様に隣にいたもう一人も発射する… びしびしと音を立てて血が辺りに細かく飛び散る… その腕は攻撃を喰らうとすぐにそこから引っ込め、ドタドタと音を立てながら先頭の位置に移動した。 「くっ…やべえぞ!!」 アレックスはハンドルを握りながら片手でショットガンを手にし、位置も掴めぬまま銃を発射した… 天井に大きな穴が開く… 「グギャアッ!!」 突然上から何者かの叫び声が響いた。 どうやら弾は直撃したみたいだ… 同時に前方のボンネットにその声の主が落ちて来る… 「…な、何だこいつ!?」 ガシャンッ!! 「だぁ、ちくしょっ!…」 アレックスがそう言い終わる前にそいつはワイパーに爪を絡ませて落ちない様にすると左側の爪を振り上げ、フロントガラスに叩き付けた… 硝子は蜘蛛の巣状にひび割れ、全体のほとんどを見えなくしてしまった。 「みんな撃て!」 ジャックはそのひび割れたガラスに向けて撃ってそう叫んだ。 皆も一斉に硝子に撃ち込む… 白く濁った硝子に真っ赤な血が飛び散るとばらばらと割れ落ちた… 消えた窓ガラスの向こうに奴が見えた… …彼が言った通り、確かに見た目はゾンビだが…明らかに他とはおかしい… 両手に生えた鋭い爪… 血の様に真っ赤な眼… ぎらぎらと妖しく光る牙… 全てが他の奴らと違っている… 「…しぶといんだよこのっ!」 そう言うとアレックスは急ブレーキをかけた。 周りに派手な摩擦音が響き渡る…
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