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「おわっ!!」
「きゃっ!!」
反動で俺とエルザは同時に前の座席の枕にぶつけてしまった。
化け物は今のブレーキをかけた勢いで前方の道に吹き飛んだ…
それと同時にアレックスはすぐにアクセルを踏み込んだ。
…奴を引き潰すつもりか…
「このっ!くたばりやが……んなっ!!…」
しかし、車が奴を引き潰す事はなかった…
奴は今ので地面に倒れ込むと思いきや、空中で体を捻らせて体制を整え、綺麗に地面に着地すると素早く上に跳んで回避をしたのだ…
…車の上で奴の体が通り過ぎる…
「はぁあああ!?」
エルザは上の穴から奴が後ろへ落ちていくのを見ながらそう感嘆詞を上げた。
奴は地に下りると、体を反らす様に顔を上に上げると、去って行く俺らに向かって雄叫びを上げた…
声は辺り一帯に反響し、木にとまっていた鳥達が音を立てながら飛び去って行く…
車は猛スピードでその場から立ち去った…
「…おい!あいつがあんたが言っていた奴なのか?」
しばらく走っているとアレックスが前方を見ながら後ろにいる二人にそう聞いた…
「…あぁ…」
「……あいつ…何で追って来ないんだ?」
「さぁな…解らないが、恐らく奴にも体力の限界ってのがあるんだろう…」
男は後ろの道を眺めてそう答えた…
「……カルロス、貴方、顔は大丈夫なの?」
「え?」
続いてエルザが俺の右頬を触りながらそう言った。
…右頬を触ってみる…
…血はかなり出てるみたいだが…
「ん~…まぁ、大丈夫だろ…」
「いいからちょっと見せて」
エルザは真剣な眼差しで俺の傷の具合を確かめた…
「………かなり深くいっちゃってるわね……貴方なら治ると思うけど…」
「まぁな…」
「けど危なかったわ…位置が間違ってたら頸動脈をやられてたわね…」
「……」
…思わず首筋をさする…
「…とにかく、一旦戻ろう…被害が大きすぎる…」
ジャックは苦い顔でそう言うと目を閉じ、溜め息を漏らした…
「…ジャック…」
エルザは彼に何かを言おうとしたが、それ以上は何も言わなかった…
…俺達は確かに助かった…後ろを見ても奴の姿は見えない…
だが…まだ俺は落ち着けなかった…
何故か心の中で胸騒ぎが続いているのだ…
…何故だ?
まるでこれから何が起きるのか予見してるみたいだ…
何かは解らないが…
凄く嫌な予感がする…
俺は寒気を覚えた…
車はガタガタと縦に振動をしながら荒れたアスファルトの道を走り、街に向かって行った…
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