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「…いっーー!!」
「我慢して、一応消毒はしとかないと…」
痛みでうめき声を上げる俺にエルザは静かにそう言うと、手にしていた血まみれの綿を新しいのに取り替えた…
「俺はもう大丈夫だって…」
「例えそうだとしても、医者として放っておけないでしょ…」
「医者って…」
…右頬が消毒用アルコールのせいで熱く感じる…
あの後…俺達はなんとか街へ戻ると、一先ず俺の部屋でジャックがパブへ依頼の失敗を伝える為に行ってる間帰りを待つ事になった…
…あのハンター二人は宿に泊まる為、途中で別れてしまった…
一応、明日また会うつもりなのだが…
「…ああ畜生!完全にイカれちまった!」
側の椅子に座っていたアレックスがそう吐き捨てると、手にしていたショットガンを壁に叩きつけた。
「ど、どうした?」
「あの時、無理に酷使しちまったせいでガラクタになっちまったんだよ…ったく、使えねぇ!…」
「…いや、つかここ…俺の部屋なんだけど…」
俺は大きくへこんだ壁を見ながらそう言った…
しかし、アレックスは俺の話を聞いてる様子もなく、片手で頭を掻きむしりながら再び椅子に腰掛けた…
…お前…
一応ここは賃貸なんだぞ…
それをそんなへこませて!…
「…あっちょっと、動かないで!」
「あいでっ!!」
エルザはソファーから立とうとする俺に綿でおもいっきし傷口を押した…
「…ば、馬鹿野郎!!…痛ってーよ!?」
「あら?大丈夫って言ったのは誰?」
「お前っ…それは…」
「今は壁なんてどうでもいいでしょ」
「あのな!お前は自分の部屋じゃないからいいが、ここは俺の……
痛っでぇえええ!!」
エルザは再び、ぐりっと傷口に綿を押して俺の会話を途中で止めさせた…
自分の目が涙目になっていくのが分かる…
「…とにかく、もう少しだけ待って…」
「ぅぅ…職権乱用だ…」
「貴方が動いたりするからよ…」
そう言うと、また頬の傷を拭き始めた…
「…それに、こんくらいしかお返し出来ないからね…」
「…は?」
エルザが少し頬を赤らめるのを見て俺は一瞬キョトンとしてしまった…
「ほら……あの時、助けてくれたでしょ…」
…いや確かに助けたが…
その後、お前も俺を助けてくれた様な…
「……どうしたの?」
「いや…お前がそんなお礼を言うなんて珍しいなぁ…て思って…
悪い物でも食ったか?」
「……」
ぐりぐりぐりぐり
「痛っっだあああああ!!!」
建物中に俺の叫び声が響いた…
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