予感

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「…どうした…君達が取れと言ったから取ったんだぞ…」 「いっ、いや…そ、そうじゃなくて……」 彼…いや、彼女の言葉にアレックスは口を半開きの状態でそう応えた… …明らかに混乱している様だ… しかし、そんな反応はこいつだけの事ではなく、無論、俺らも同じだった。 背中に掛かる程の長さのブロンドの髪、そして鋭い眼光… …今までは顔がよく見えなくて分からなかったが、帽子を被っていた彼は女性だったようだ… 「てかあなた…女性だったの!?」 続いてエルザがそう言う。 「…別に男とは一度も言ってないが…」 「声が妙に高いなぁとは思ってたけど…まさかそんな…」 「女性ハンターは貴女だけじゃないだろ…」 「そりゃそうだけど…」 俺は再びアレックスを見てみた… まだ口が開いたままだ… 視線がずっと彼女の方を向いてる… 「…アレックス?」 「んぁ?な、何だ?」 「……どうした?」 「いや…彼女、綺麗だなぁ…って…」 「は?」 …確かにまじまじと見ると彼女の顔はかなり整っていて、誰が見ても美人だと分かった… しかし、彼女の眼がまるで鷹の様に冷たい眼光を放っているせいか、その美しさが際立っていない… 「しかし…確かにエルザより綺麗だ…はぶぁっ!?」 「…今何か言った?」 「い…いや…」 交互に二人を見ながらそう呟いていると、不意にエルザの拳が俺の顔面に飛んで来た… エルザは少し不機嫌な表情をしている… …何故? 「…とにかく、これで信用してくれたか…」 「あぁ!もちろん喜んで手伝うぜ!」 「早っ!?」 彼女が喋り終える前に間髪入れずアレックスが即座にそう答えた… 俺のツッコミを聞くと、肩に腕をグイッと回し… 「カルロス…あんなカワイコちゃんが困ってるのに無視出来る訳ねぇだろ?」 顎で彼女を指しながら耳元で小さな声でそう俺に言った。 「お前…随分と現金じゃないか?…」 「ま、細けぇ事は気にすんな!……上手くいけば俺にも念願の春が…」 「…おい」 そう言ってアレックスは何処かに視線を向けながらにやけていた… …駄目だ…完全に夢の中だ… 「…ま、やるしかないわね…」 「……だな」 俺らは横で未だににやけているあいつをシラけた顔で見ながらため息混じりにそう言った… 「…所でジャックは?」 「へ?」
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