返報

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「…ジャック!おい、いるなら開けろ!」 アレックスが扉を叩きながらそう叫んでいた。 …あいつがいつまでも酒場に来ないので、こうやって自室の前で呼びかけているのだが…全く返事が無い… 「いないんじゃないの?」 側でエルザがそう言う。 「ならとっとと酒場に来る筈だろ…おい!いないならドアを蹴やぶ……ん?」 アレックスがドアノブをいじり始めた瞬間、何かに気付いたのかそう声を漏らした。 ノブをゆっくりと後ろに引くと、ガチャリと音を立てて扉が開いた… 「…開いてやがる…」 不審に思ったアレックスは肩に背負ってる銃を手にすると部屋の中に入って行った… 部屋の中は綺麗に整理されており、辺りはしんと静まり返っていた。 天井にある照明は点けっぱなしのままで辺りを淡い光りで照らしている… 「…泥棒…って訳じゃないみたいだな…」 アレックスが辺りを物色して安全なのを確かめると銃をしまいながらそう呟いた。 「けど何でいないの?」 「知るか。お前らあいつが何処に行くとか聞いてねぇのか?」 「それこそ知る訳無いでしょ…」 洗面所の扉を開けながらエルザがそう呟いたその時… 「ちょっ何これ!?」 「ど、どうし……っ!?」 彼女の声を聞いて慌てて洗面所の中を覗いた瞬間、動かそうとした足を止めてしまった… 無造作に散らばった弾薬…縮られたままのテープ…数本の吸殻と手榴弾… 一瞬でそれが異常な光景なのが見て取れた… エルザはゆっくりと中に入ると、散らばっている弾薬の一つを手に取ってそれを眺めた… 「…ジャック……貴方は一体…何を…」 何もない空間に顔を向けてそう呟く… 「何か…ただ事じゃねぇみてぇだな…」 「そうらしい……ん?…これって…」 「…何?」 俺は側に置かれていたゴミにも見えなくもない紙切れに気付き、それを手にした。 中に文章が書かれているみたいだ… 俺は黙ってそれを読んだ… 「……!?」 「ど、どうしたカルロス…」 「……アレックス。急いで酒場にいる二人と一緒に車をこっちに持って来てくれ…」 「はぁ?お前、いきなり何を…」 「いいから早く!!」 「…わ、分かった…」 俺がそう一喝すると、アレックスは急いで駆け足で部屋を出て行った… 「カルロス…一体どうし…?」 言い終わる前に彼女の前にその紙を出して中の文章を見せた。 「……ちょっと、これってまさか!…」 「…あぁ。そのまさかだ…」
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