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しばらくして、俺達は再びあの森に向かう為にフルスロットルで荒れた道路を飛ばしていた。
途中、ひび割れたアスファルトのせいで上下に揺れる事があったが、アレックスは馴れた手つきでハンドルを回して車体を整えた…
「…随分と手慣れてるみたいだな…」
後部座席で帽子を上に上げてる女性ハンターが彼を眺める様に見ながらそう呟いた。
それを聞いてアレックスは照れ臭そうに笑ったが再び運転に集中をした…
「…ちょっ…アレックス!」
「…あ?何だ?」
「どうでもいいけど…この風何とかなんないのか?」
助手席に座ってる俺は顔をしかめつけながらそう叫んだ。
昨日のあれで窓硝子が無くなったせいで前方からの風を直に受けてしまうのだ…
「無理言うな。おめぇが急げって言ってんだろ?」
「…ぅぅ…目が…」
風のせいで目がすぐに渇いてしまう…
…つか、ここはいつもエルザが座ってるのに何で俺がここに座ってるんだ?
…いや。緊急だから急いで乗ったせいもあるかもしれないが…
「…俺は奴らにケリをつけに行って来る…
今まで色々と迷惑をかけてしまってすまなかった………許してくれ…」
不意に後ろでエルザがあの紙切れを手に取りながらそう読み上げた…
「……何が、『許してくれ』…よ。
あたし達の気持ちも知らないで…誰も貴方に責任を求める筈無いでしょ…」
「…エルザ…」
「…責任感が強すぎなのよ…」
そう言うと紙をぐしゃりと握り締めた。
顔を見ると憐れみと一緒に不安が入り交じっているのが見て取れた…
「…少しいいか」
「?」
そんな時、エルザの隣で彼女がこちらに話しかけて来た。
「その手紙を書いたのは…昨日いたあの男からか?」
「…えぇ…ジャックって言うの…」
「……随分と勇敢な奴だな…奴に一人で向かうなんて…」
「勇敢…違うわね…」
彼女はそれを否定した。
「彼は昨日のあれで大事な仲間を全てを失ったわ…恐らく、あたし達よりずっと付き合いが長いわ…
少し前…その彼等が怪我をして入院した事があったの。その時の彼、治療費が無くてあたし達に対してとんでもない事をした事があるの……
…彼は仲間の為ならどんな無茶な事でもするタイプなの。
…恐らく、今回も仲間を想う余りに自分に対して責任を感じちゃったのかもね…
もしかしたら彼…わざと死にに行こうとしてるんじゃないのかしら…」
「死にに…」
エルザがそう話し終わると、しばらくの間皆は押し黙ってしまった…
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