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「…な…に…」 「スティーブ!?」 カレンの目の前でスティーブの腹から紅く染まった血濡れの手が突き出した。 後ろにいるのは…そう… 奴だ… 「ぐっ…がはぁっ!」 奴は腕を彼の腹に刺したままゆっくりと上に持ち上げて天に向けて掲げた。 スティーブは口から血ヘドを吐きながら苦しそうに呻き声を上げる… 「お、おい…嘘だろ…」 皆が動けないでいた時、アレックスが信じられないような感じでそう呟く… エルザは慌てて銃を取り出して奴に向けて構えた。 だがその前に奴は腕を下に振り払って彼を乱暴に地面に叩きつけた… ドスッという鈍い音が鳴り響く… 血みどろになった自分の腕を舌でゆっくりと舐めとるとその赤い眼でこちらを睨みつけた。 「…死んだんじゃなかったのか…あいつ」 「まさか……今までのあいつらの様に身体強化がされるとでも言うの?」 俺とエルザは後退りしながらそう話した。 「だが見た目は変わってないぞ!?」 「…恐らく、身体的変化より回復能力が強化されるのね…ほら、身体を見て」 彼女はそう言いながら奴に指を向けた… …今まで奴の体に風穴を空けた所が白い煙と何かが蒸発する様な音と共にみるみる内に塞がっていってる… 「…よ…よくもスティーブを!!」 突然側にいたカレンが奴に向けて銃を乱射し出した。 だが今度は避けず、奴はそのまま真っ直ぐに走りながら右腕を振り上げて彼女に向かって行った… 「!…クソっ!」 それを見た俺は急いで彼女に飛び掛かると肩を掴んでその場から離れさせた。 …奴の爪が俺の頭ギリギリをよぎり、髪の毛が少し切れて辺りに飛散する… 俺はそのまま彼女の頭を抱え込む様に地面に倒れ込んで身を護った… 「…っ!この!」 続いてエルザが両手に構えた銃を横にして、まるで馬族撃ちの様なかっこをすると物凄い速さで弾を撃ち出した… 弾は全て奴の胴体に命中。 だが奴はひるまず、蹴りで彼女を吹き飛ばした。 エルザは近くの木にぶつり、喉を詰まらせた様な咳をして地に落ちた… それを見てアレックスも銃を撃ち込む… 今度は横に回転する様に避けると後ろに下がって行った… ジャックが急いで彼女に走り寄る… 「…エルザ!しっかりしろ!」 「ぐっ…! あ、あたしは大丈夫。それより…」 「動くな!…無理に動けば体に支障が出るぞ」 「そんな事…言ってる場合じゃ…」 「…おい!また来るぞ!」 エルザに向けて再び奴が襲い始めた…
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