返報

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彼は胴と下半身がちぢれ飛んでしまった為に出血多量の為、意識朦朧としていた… 彼の上で銃を構えてる男が先程から側にいるもう一人と何か話し込んでいる… 彼は今すぐにでもその二人を殺したいと思っていたが、これではまともに攻撃出来る筈がなく、ただ低く唸りながら潰れていない方の眼で彼等を睨みつける事しか出来なかった。 そんな時、先程まで話していた一人が突然こちらに振り向き、片手に持っていた何かを彼の口の中に押し込んだ… 同時に口の中に鉄の様な苦い味が広がる。 そしてそれに付いていたピンを引き抜くと、彼等は逃げる様にその場から離れた。 …彼は残った片腕で口の中のそれを取り出して確かめようとした。 だが、彼はそれが何なのか解る事は無かった… 彼が手にしていた物… それは…… 一瞬の炸裂音。 同時に黒い土煙と肉片が飛び散り、伏せていた俺やみんなの体に降り注いだ… 数秒後、俺はゆっくりと顔を上げて爆発地点を確認した… そこには真っ黒な肉塊と白い煙が立ち上っていた… アレックスが近付いて行く… 「…さすがグレネード…威力が半端ねぇな…」 右手で眼の前の煙を振り払う様な仕草をしながら少し咳ばらいをしてそう呟く。…一方でカレンは奴の攻撃で倒れていたスティーブに走り寄った… 「…す、スティーブ! たのむ…返事をしてくれ!」 彼女は仰向けになっている彼の上半身を持ち上げながらそう叫んだ。 …彼の脇腹にはぽっかりと穴が空いており、中の内臓が見えて大量の血液が流れ出ていた… 彼は彼女の声を聞くと閉じていた瞳を薄く開けて今にも消えそうな小さな声で答えた。 「…か…カレン……奴は?」 「心配するな、奴は完全に殺した…」 「…そうか……ぐっ!」 「スティーブ!?」 彼は一瞬笑うと思った瞬間、口から血が零れ、彼女の服を真っ赤に染めた… 「…はぁ…くそっ…どうやら…長くは持たないらしい…」 「だ、大丈夫だ!すぐに止血を…」 「止めろ……お前も分かってる筈だろ…」 「っ……」 彼にそう言われると彼女は何も言い返せなかった… 「…エルザ、あの状態じゃ…」 「…えぇ」 俺の会話にエルザは伏し目がちでそう答えた… 「しばらくは…ね…」 「…分かってる」 …あの失血量からして、助からないのは目に見えている… エルザもそれを解っているのだろう。 何もせず、ただ二人の会話を聞いていた… 俺は再び彼女の方に目を向けた。
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