第一部 プロローグ

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「…ほら、ちゃんと歩いて!」 「ま…待て…か…買い過ぎだって!…」 俺は顔が隠れる程いっぱいの紙袋を持たされ、ふらふらと道を歩いていた… カチャカチャと瓶が揺れる音が鳴る… 「…全く、だらしがないわね!」 「無茶言うな!」 「……あ、そうだ」 「何だ?…もう買えねぇぞ」 俺が苦しんでいる中、エルザは手をポンと叩くと何かを思い出したように言った。 「そうじゃなくて、ついでだからパブに寄って明日の仕事を貰いに行こうかなぁ…て思って」 「そんなの明日でいいだろ!俺ゃ…腕が…!」 「何へたれた事言ってんのよ!ほら行くわよ!」 「だから待てって!……ぅぅ…」 半年前までゾンビの討伐報酬は軍から貰っていたのだが、最近になってそのシステムが廃止になってしまった… 理由は簡単。金が足りないのだ。 たったの一年ちょいで軍の予算を軽く上回る賞金に手が回らなくなったらしい… そのせいで俺らのハンター生活は終了……するはずはなく、今もこうやって続いている… 何故今もやってるかって? 実はあの後、ゾンビ討伐は民間の団体が委託する事になったのだ。 軍のせいでハンターが消えてはたまったものじゃないからだろう… 報酬は団体から捻出する金と依頼人との直接交渉で手に入る。 場合によっては無償…とゆう事も少なくない。 この新しい仕組みのせいで、ハンター数は減ると思っていたが…間違っていた。 金が少なくなる事はあるが、逆に有り得ない程の大金を手にするキャンスがあるせいか、ハンター数が前の1.5倍程に増えてしまった… まぁ、相変わらず途中で辞めてしまう人も多いが… そもそもこの生活を長く続けている人達はごく限られた人数だけだ。 皆、途中で怪我するか死ぬか、でなきゃ十分に稼いだから辞める奴が大体だ… 中には気が狂って自殺する者もいる… まぁ、こんな事をすりゃ当然だわな… その為、長く続ける者は自然と少なくなってしまう訳だ。 俺らは初期の頃からやっているので、ここらじゃちょっと有名になっている… …まぁ、別の理由で有名になっているのもあるが…
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