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その後、俺は疲れながらも、何とか人込みの中を越えてカウンターに辿り着いた…
「はぁ…え、エルザ…」
「…あら?随分掛かったわね?」
エルザは席に座って酒を片手に持ちながら口に付けていた…
既に頬はアルコールのせいで軽く火照っている…
…依頼を確かめに来たんじゃなかったのか?…
しかし、あえてそれは言わなかった…
コイツの酒好きは最初っから知ってたし…
「こんなにかかるなんて…喧嘩でも売られた?」
「…いや、途中でアレックスに会ってさ…」
「え、アレックスに?……ん~…まぁ、此処にいるのは普通よね…」
彼女は自分に言う様にそう喋ると隣に空いてる席をぽんぽんと叩いて俺に座る様に促した…
…ったく…こいつは…
俺は仕方なく荷物を置き、腰を掛けた。
「…なぁ…仕事は?」
「馬鹿ね、ここに来て酒を頼まない奴が何処にいるの?」
「いや…そりゃそうなんだが…別に俺らは…」
「いらっしゃい!注文は?」
俺らの前で不精髭を生やした店主が営業スマイルとも言うべき笑顔でそう聞いて来た。
「…じゃ、水を…」
「彼にはあたしと同じのをお願い」
「はいよ!」
エルザは俺が注文を言う瞬間にそう遮った…
「お、おい…俺は酒なんか…」
「別にいいじゃない、少しは付き合いなさいよ」
「…つか…酒は俺には…」
「大丈夫よ!そんな大量に飲まなければ」
「…その言葉は自分に使えよ…」
「ん?…今何か変な事言ったでしょ?…」
俺が小さな声でそう呟いたら彼女はじろっと見てそう聞いて来た…
「べ、別に…」
「……ふぅ~ん……」
…や、やばい!…
明らかに疑ってる!…
どうする?このままじゃ殴られるのは必須だぞ!?…
つか、カン鋭過ぎだろ!
ガチャッ!
「はい!お待ち!」
俺らの間に変な沈黙が続いていると、隣でグラスが机に当たる音が響いた。
「…ほ、ほら!酒も来たんだし!…飲も!」
「……」
俺は彼女の肩を叩きながら慌ててそう言った。
しかし相変わらずアイツはこちらを睨み続けている…
俺は額に冷や汗をかきながら彼女から顔を少し背けて酒に口をつけた。
…ぅぅ…隣であいつの視線が痛い…
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