第一部 プロローグ

9/11
1595人が本棚に入れています
本棚に追加
/266ページ
「…ん~…何かもっといい仕事は無いかしら?」 エルザは机に依頼内容が書かれている紙を数枚置きながら頬に手を付けてそう呟いた… …もう機嫌は治ってるみたいだ… 「別にそれでいいんじゃないのか?」 「何言ってんのよ、こんなしけた依頼やったってたいした額貰えないじゃない…」 「いや、そんな欲張んなくとも…」 「それに、あたしは一発でドカッと手に入れたいし…」 「…お前、どこまで物ぐさなんだよ…」 「…ちょっと、お客さん…」 「はい?」 俺らがそんな会話をしていると目の前にいる店主が身を屈めながらこちらに話しかけて来た… 「あの…何ですか?」 「あんたら…話しを聞く限り、一度にまとめて金が欲しいみたいだね…」 「…まぁ、そうですけど…」 エルザがそう答えると店主は一瞬周りを見回して下から一枚の紙を取り出して俺らの前に置くとそれに指を置いた… 「…これは?」 「…実はな、先日面白い依頼がこっちに来たんだよ…内容は森の中にいるゾンビ共を一斉掃討する依頼だ…」 「一斉掃討?」 「あぁ、何でも森の中に大量のゾンビ共が集まってるって言う話があって、一般人じゃ手に負えなくて軍がこの依頼を頼んだんだ…」 「…軍が依頼したって事はかなりヤバイって事ね…」 エルザは依頼書を見ながらそう言った。 「どうだい?面白そうだろ?」 「…けど…この依頼、あたし達だけじゃ無理なんじゃないの?」 「もちろんさ、だから他に数グループの奴らにも依頼してあるんだ」 「合同依頼って事か?」 「報酬も弾むし、やる気はないか?」 店主は俺に顔を向けてそう聞いて来た… …どうする? 確かに軍の依頼だから値は高いかもしれない… だが、同時にリスクも高くつく… …個人的には安全面を考えて地道に稼いだ方がいい気がするんだが… 「…はい、これでいいわね」 「へ?……っておい!」 だが、俺がそんな風に悩んでいる間に隣でエルザが契約書にサインをしてしまった… 「どうしたの?」 「お前っ…何勝手にサインしてんだよ!」 「何?…別に大丈夫よ、そんなたいした事無いって…」 …いい加減にその口癖を直せよ… 「んじゃ、仕事は明朝に始まるからな」 店主は契約書を手に取り、彼女にそう言った。 「オッケー、わかったわ」 「ちょっ!…待てって!少しは俺の話も…」 「……なに?」 「………いや…」 彼女の威圧的な目で俺はもうどうする事も出来なかった…
/266ページ

最初のコメントを投稿しよう!