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「おい」
「ふぁい?」
しまった。
抹茶に夢中ですっかり忘れていた。
不良を見るとムスッとした顔でこっちを見ていた。
私はゴクリと、口の中に残っていた蒸しパンを飲み込んだ。
「何でそんなに離れてるんだ?」
「へ?」
予想外の言葉に一瞬何をいわれたのかわからなかった。
不良は苛々とした様子で私を正確には私達の間を指で差し示した。
「だから、これ。間空け過ぎだろ」
そうなのだ。
私は不良から2メートル程離れて、屋上のフェンスに身を寄せてお昼を食べていたのだ。
不良はムスッとした顔のまま、焼きそばパンとコーヒーを持ってこっちに近付いて来た。
「す、すみませんっ。男の人苦手だからつい……」
「何で苦手になったんだ?」
「え?」
不良が目の前にドカッと腰を下ろした。
近い。
私は思わず後退りしようとしたが後はフェンスで結果、ガシャンと音をたててフェンスの金網が背中に食い込んだだけだった。
「昔は平気だったろ。小学生の時は普通に男友達もいたし」
「何で……」
まるで全てを見抜くかの様な鋭い眼差しを真正面から受けて、私は急に目の前の人が怖くなった。
何でそんな事を聞くの?
何で小学生の時、私に男友達がいた事を知っているの?
何で……何も聞かずに、私の好きな抹茶だけを選んで買って来れたの?
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