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不良は私の顔を睨んだまま何も話そうとしないので、私はビクビクしながら尋ねた。
私が声をかけると不良はハッとしたように目を大きく見開いて、私から目を逸した。
不良はまた黙り込んだまま何も言う気配がないし、あと5分で予鈴もなってしまう。
なにより私達を遠巻きに眺めながらも、好奇心剥き出しなのを隠そうともしない他の生徒達の視線に堪えることができなかった。
正直、このままダッシュで教室まで逃げ出したい気分だ。
「……あの、もう、行ってもいいですか?」
「ま、待てっ!」
「ひっ!?」
早くこの場所から離れたくて門を跨ごうとした私は、不良に腕を掴まれてしまった。
その途端、腕から全身にかけて一気に恐怖と悪寒が身体を駆け巡った。
「……や」
身体がカタカタと小刻みに震え、顔からは血の気が引き、額から嫌な汗がブワッと噴き出したのが自分でもわかった。
不良は恐怖で震える私に構うことなく、とんでもないことを叫んだ。
「俺と結婚を前提に付き合え!」
「いやああああっ!!」
「ぐはあっ!?」
限界だった。
私は不良が叫んだ言葉を聞くことなく、掴まれていない方の手で不良の顔をおもいっきり殴り飛ばした。
そして不良を振り返ることなく、急いで校舎の中へと駆け込んだ。
不良が小さく呟いた言葉を聞かずに……。
「……やっと見つけたんだ。もう……逃がさねぇ」
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