1‐3章──王都ラグネルナ

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「じゃあ聞くけど、さっきアンタは“ラグネルナは用済み”って言ったわよね? これからどうするつもり?」 「ゼントールの方まで向かうつもりだが?」 「ゼントールか……道とか分かるの?」 「そりゃあ……地図があるからな」  セレナは少しの間、何かを考えていたが、何かを思い付いたらしく、指をパチンと鳴らしていた。 「とりあえずゼントールまで道案内するわ。ゼントールまで詳しい道は知らないでしょ?」 「それは……まあそうだが」 「じゃあ決定。それに、ラグネルナからゼントールに向かうのに、道案内が必要な理由がちゃんとあるのよ。どう? 悪い話じゃ無いでしょ?」  セレナの出した取引に、ヴェリウスは迷ったものの、セレナがああ言っている辺りから、何らかの危険性があるのを理解したヴェリウスはセレナとの取引を承認した。 「じゃあよろしく、ヴェリウス」 「ああ」  セレナが笑顔を向け、ヴェリウスも釣られるように微笑んだ。 (一人旅よりは百万倍だし、何より中々の大物だしな)  しかし、先程とは別の意味で、思わずヴェリウスは口元を緩めながら、ニヤニヤと気持ち悪く笑っていた。  男女が二人っきりなので分からなくも無いが、この男はそろそろ何とかした方が良いのかも知れない。  そんな中、二人は思い出したようにアノンを吹き飛ばした建物に目線を向け、二人共、徐々に顔色が悪くなり、冷や汗を流し出した。 「そう言えば少佐をぶっ飛ばしたのだったな私は……」 「理由がどうであれ、アタシも犯罪者扱いなんだっけ……」 「謝っても許されないよなぁ……」  無論、政府軍の少佐を吹き飛ばしたのは大問題であり、上層部にこの問題が露見したら最後、確実に犯罪者の仲間入りである。 「逃げるか」 「そうね」  互いに確認を取った後、ヴェリウスとセレナは全速力でその場を走り去り、ラグネルナから逃げ出す形でゼントールに向かって行った。  かくして、何とも幸先の悪いスタートを切って、ヴェリウスとセレナの旅は始まったのである。
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