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「全く、少し感謝したのにこの変態……性根から完全に腐ってるわね」
少女はもう一度、強烈な踵落としを頭に当てて立ち去ろうとしたが、青年はまるでゾンビのように復活して、少女に声を掛けて引き止めた。
「私の知った事では無いが……何故そんなにラグネルナに急ぐ?」
「そのままよ。変態に教えるつもりは毛頭無い」
「なら仕方がないな……この林の先に洞窟があって、その洞窟からなら関所を無視して突破出来るのだが……」
青年の言葉に、少女は強い口調で返して立ち去ろうした時、突然、青年の独り言のように放った言動に、思わず彼女は歩きを止めて、立ち止まった。
「ただし洞窟は危険で、何より通路とは言えないような場所だからな……誰か同行者が欲しいな」
「よし、無視」
「酷いな君は!? そこは一緒に行きましょうと言うべきじゃないか!!」
青年は無視して歩き出す少女の肩をガッチリと握って、必死に何かを訴え出した。
どうやら少女に同行して欲しいようだが、先程の行動が完全に裏目に出てしまったのだから自業自得だろう。
「おっと、言っておくが私はこのルートの道は同行しない限りは誰にも教えないし、何より私も早い所ラグネルナに行きたいのでな。まあ、もしもこのルートを通りたいなら、この変態紳士に同行するしか無いな」
「最悪の選択肢ね!!」
少女の冷たいツッコミを華麗に無視して、青年は今さら顔に付いていた土を左手で軽く落とした。
しかし少女も早い所ラグネルナに行きたいのは山々なので、そんな危険な道を通ろうにも、彼女一人では肝心の道が分からない。
「…………分かった。なら同行を頼むわ」
嫌々ながら同行を頼んだ瞬間、青年が喜びのあまり少女に抱き付こうとしたので、少女はとりあえず青年の顔面を蹴り飛ばしておいた。
「……まあこうなったのも何かの縁だ。とりあえず自己紹介しておくが、私はヴェリウス・シュラウドだ。呼びにくいならヴェリちゃんと呼んでくれ」
「セレナ・ランバレルよ。ちなみに最後のは死んでも却下」
セレナのにこやかな拒否に、ヴェリウスは軽くショックを受けていたが、気にしないでおこう。
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