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11月5日金曜日。
真っ青な空に、真っ白な雲。
絵に描いたような秋晴れの空を眺めながら、僕は英語の授業に耳を傾けていた。
窓際の席は良いもんだなと、快適な健常者ライフを満喫している今日この頃。
五体満足に生んでくれた両親に感謝し、僕は窓の外の景色を眺め回しながら授業を聴くという、贅沢な五感の使い方にハマっている。
そして、発見したことが一つある。
金曜日の5限。
昼食後ということで副交感神経が張り切り出し、最も眠気を感じやすいこの時間。僕らが英語の授業を受けている教室棟の西側にある、第二特別教室棟の美術室では、1年7組が美術の授業を受けている。
何故1年7組だと解るのかというと、僕も小西先輩のように全校生徒のプロフィールを把握しているから……というわけではない。
生徒会長だからって、誰もがそこまで豪快に脳内メモリを活用できるわけじゃない。
ただ、美術室の窓際の席には、僕が1年7組だと確信を持てる人物が座っているというだけのことだ。
『やっほ~、響く~ん』
僕の存在に気付いた梓は、小さく手を振りながら、口パクで僕に話しかけた。
窓際の席、サイコーです!
『今、何の授業?』
イタズラをする子供のように楽しそうな笑顔で、梓は尋ねた。
僕は英語の教科書を窓の外に向ける。
『授業、楽しい?』
僕は、立てた親指と笑顔で答えた。
『勉強、好き?』
梓には、遠く離れた僕の言葉を読み取る術がない。
だから、僕は頷き、梓は質問を投げかける。
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