伝説の作り方

9/10
前へ
/158ページ
次へ
  ───── 11月5日金曜日。 真っ青な空に、真っ白な雲。 絵に描いたような秋晴れの空を眺めながら、僕は英語の授業に耳を傾けていた。 窓際の席は良いもんだなと、快適な健常者ライフを満喫している今日この頃。 五体満足に生んでくれた両親に感謝し、僕は窓の外の景色を眺め回しながら授業を聴くという、贅沢な五感の使い方にハマっている。 そして、発見したことが一つある。 金曜日の5限。 昼食後ということで副交感神経が張り切り出し、最も眠気を感じやすいこの時間。僕らが英語の授業を受けている教室棟の西側にある、第二特別教室棟の美術室では、1年7組が美術の授業を受けている。 何故1年7組だと解るのかというと、僕も小西先輩のように全校生徒のプロフィールを把握しているから……というわけではない。 生徒会長だからって、誰もがそこまで豪快に脳内メモリを活用できるわけじゃない。 ただ、美術室の窓際の席には、僕が1年7組だと確信を持てる人物が座っているというだけのことだ。 『やっほ~、響く~ん』 僕の存在に気付いた梓は、小さく手を振りながら、口パクで僕に話しかけた。 窓際の席、サイコーです! 『今、何の授業?』 イタズラをする子供のように楽しそうな笑顔で、梓は尋ねた。 僕は英語の教科書を窓の外に向ける。 『授業、楽しい?』 僕は、立てた親指と笑顔で答えた。 『勉強、好き?』 梓には、遠く離れた僕の言葉を読み取る術がない。 だから、僕は頷き、梓は質問を投げかける。
/158ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5388人が本棚に入れています
本棚に追加