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──2010年9月15日
「ちょ、ごめっ、どいてー!」
ちょうど僕が階段を上りきったところで、目の前から全力疾走して来る女の子に気が付いた。
僕は割と素直だし女の子にはかなり優しい方なので、左に一歩ずれてインコースを空けてあげた。
「てわぁ、退いちゃだめー!」
女の子は奇跡的な反射神経を発揮してしまったらしく、僕のすぐ目の前で進路を急に変えた。
つまり、彼女は僕にぶつかったってこと。
あーあ、君がどいてって言ったからどいたのに。
僕の身長は179センチ。体重は確か56キロだったと思う。
自慢じゃないけど、僕は比較的華奢な体だ。突進してくる女の子を食い止めるポテンシャルなんて持ち合わせている筈がない。
「ぐ、ふぐっ!」
でもまぁ、その女の子を空中で咄嗟に抱いて階段とその下の踊り場に自分の背中を打ち付けるなんて、我ながらめちゃくちゃカッコイイと思う。
めちゃくちゃ痛かったけどさ。
「ご、ごめんね!本当にごめんなさい!大丈夫!?」
階段の踊り場に横たわったままなんとか目を開けると、女の子の泣きそうな顔と言葉が脳みそに飛び込んできた。
あーあ。折角こんな可愛い女の子を抱き締めて役得だと思ったのに、もう離れちゃってるよ。
あれ?ていうかこの子ハーフ?凄く可愛いな。
「ごめんなさい。廊下は走っちゃいけないのに…」
多分、今やこの端山学園にそんなルールはないんじゃないかな。
みんな伝説伝説って言ってやたらと突っ走るし。
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