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「ど、どどどうすれば~。って!こんな時は保健室に決まってるやん!早くほけ…」
台詞の途中で、女の子は後ろを振り返った。
どうやら、急いで走っていたのは誰かから逃げていたかららしい。
「梓ちゃん!やっと追い付いたぜ!」
階段の上から現れた人物を見て、僕は驚愕した。よりにもよってそいつは、僕のこの学園唯一の友人、進藤克己だった。
何をやってるんだよこいつは。
もしかして、こいつがこの女の子──梓ちゃんを追いかけてたのか?
それで、僕がこんな痛い思いをしたのか?
「さあ、今日こそ来てもらうぜっ……て、そこに転がってんのはもしかして響か?」
何となく、僕はイラッとした。
だから、本当は背中が激しく痛いのにちょっと無理して立ち上がり、梓ちゃんを庇うようにして腕を伸ばした。
ついでに、克己を睨み付ける。
女の子を追いかけ回すなんて、なんか気に入らない。
「よ、よう響。どうしたんだよ?そんな恐い顔す…」
何より、梓ちゃんが何だか困った顔をしているのが、僕は見過ごせなかった。
だから、伸ばした手でそのまま壁を殴り、克己を黙らせた。
ついでに、口パクで『かえれ』と凄んで言ってみる。
「わかった、わーかったって。悪かった。追いかけるのはやりすぎた。じゃ梓ちゃん、今日は引き下がるけど、考えといて欲しい。この学園の生徒会には、君が必要なんだよ」
それだけ言うと、克己はそのまま階段を下りて行った。
梓ちゃんがホッと息をつくのを、背中で何となく感じた。
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