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「……わからないんです……何故だかわからないけど、あの人を見るたびに胸がきゅんきゅん泣くんです。こんなの初めて……。それとともに……体中がウズウズして……変な気分になって……エッチなことをしたくて我慢できなくなるんです……」
奈緒が顔を隠したまま、搾り出すような声で言った。
「奈緒、それ、たぶん……恋だよ♪ 初恋♪♪」
モモが浮かれたように言った。
「……そうですか……?」
「絶対そう!! さすが奈緒♪ 一筋縄ではいかない恋をすると思ってた!」
「うぅぅ……わたし、自分は恋なんてしないもんだと思ってたのに……」
「あたしたち、ずっと世界征服にうつつを抜かしてて、恋愛どころじゃなかったからねー。実を申せば、あたしも最近、もしかしたら恋をしてるのかなーなんて思うことがあるよ」
そう言って、とろんとした意味深な表情で俺と奈緒を交互に見た。
あんな表情で俺だけを見つめてくれたなら、俺に恋をしてるのか!?と大いに期待できるのだが、奈緒も同じように見たということは、どうも男女の恋情ではなさそうだ。
こいつの頭の中では友情と恋愛が変態的な形でごっちゃになっているように思われてならない。
だが、奈緒の場合はやはり純粋に恋だろう。
とりあえず、奈緒が恋をしたということは、ついに普通の女の子としての道を歩み始めたってことなので、喜ばしいではないか。
その相手が俺でなかったことは甚だ残念なことだが。
それにしても、あの少年のどこに奈緒の琴線に触れるものがあったのか、後学のために知りたいものだ。
まぁ、奈緒ほどの人が恋をする男だから、きっと磨けば四方八方に光芒を放ちまくる特大金剛石の原石なのだろう、きっと。
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