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奈緒が中学生に恋をしたというエピソードは、瞬く間に学校中に知れ渡った。
スーパーアイドルとしての仕事でしばらく学校を休んでいるから奈緒の恋愛を知らないはずの美園萌絵梨ちゃん(彼女のプロフィールや人間性については、詳しくはシリーズ第2弾『ゆるっ娘モモちゃん 穢されたアイドル編』を参照してね)が、何故かテレビでぶちまけてしまったからだ。
「わたしの高校のお友達が中学一年生の男の子に恋をしたんですよ♪ しかも、それがその人にとって初恋なんです! ロマンチックですよねー。うまくいくといいなぁって祈ってます。そのお友達、すごい美人で、優しくて、胸もすごくおっきいから、たぶんうまくいくと思います! え? わたしですか? 恋愛話、全然ないですねー。わたしはファンの皆さんが恋人ですから♪」
登場人物の名前は伏せていたが、萌絵梨ちゃんが友達と呼ぶ女子はモモと奈緒だけだし、しかも萌絵梨ちゃんに美人と形容されるのは奈緒だけなので、必然の帰結として奈緒が中学生に恋をしたことが学校中の周知事項となってしまったのだ。
「んもう! ミソノちゃんめっ!!」
翌日、学校で奈緒は顔を真っ赤にして、この場にいない萌絵梨ちゃんを責め立てた。
「……」
モモは困惑顔。
「キーッ!! モモ様がミソノちゃんに教えたんでしょ!?」
そうだ。こいつが悪いんだ。
「ごめんねー。まさかテレビで喋っちゃうなんて思ってもいなかったから。でも安心して! 美園ちゃんにしか教えてないから」
「もうっ! ミソノちゃんがいちばん危険なんですっ!」
確かに。人気アイドルである萌絵梨ちゃんは、公共の電波という途轍もない伝播力を持つ強烈な凶器を使用できる立場にいるからね。
たとえ本人に悪用するつもりがなくても、ついうっかり電波に乗せてしまったらアウトなのだ。
萌絵梨ちゃんにはもちろん世間に言い広めるつもりなどはなかった。
ただ、楽しい話題として、歌番組のトークでちょこっと喋ってしまっただけだ。
萌絵梨ちゃんは奈緒の恋にいたく感銘を受けているみたいだが、萌絵梨ちゃんの話を聞いて落胆した野郎どもは多いだろうな。
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