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どどーん!!!
特大の花火が炸裂し、余韻にかぶさるように、たくさんの小さな閃光がぱらぱらと弾け飛ぶ。
俺に寄り添ってレジャーシートにちょこんと座っている栗永モモは、花火が打ち上がるたびに、それがどんな種類のものであっても「わぁ」とか「ほぉ」とかいちいち反応する。
その様子が俺の手に負えないほどかわいらし過ぎてクラクラする。
花火の明かりに明滅するモモの綺麗な横顔をちらちらと盗み見るたびに、何故だか悲しい気分になる。
美しい物を至近距離で見ることが悲しいなんて……どういうことだろう?
……などというわけのわからない気分に浸っていると、
「斜め上ばっかり見てたら首が痛くなった」
モモの後頭部がふわっと俺の肩に載った。
ちょっと汗っぽい、甘酸っぱい匂いがふんわりと鼻を包んだ。
全身がドキドキ脈打ち、俺の指に引っかけている、モモが掬った金魚の袋がゆらゆら揺れる。
俺は指に頑張って力を入れて、金魚袋の揺れを最小限に抑える。
驚かせてはいけない。
この袋は仮の宿だけど、できるだけ快適に過ごさせてあげないと。
鯉と鯛の中間みたいな姿の、金魚の中では最も特徴に欠けるつまらないタイプの奴だが、モモの飼い魚になる奴だと思うと愛しさがこみ上げてきて、自然と扱いも丁重になる。
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