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俺と栗永モモは二人で花火大会の会場にいるのだ。
俺たちの今までの行動と照らし合わせてみると、我ながら否応なく不似合いだと思える健全な場所に。
俺は昨日の夜を思い返した。
「ねぇ、尾奈くん……」
電話越しのモモの声は、いつになく緊張していた……ように感じられた。
「あ、あ、あのさ……あ、あたしと……………………」
「……」
「デートしよっ!! 奈緒抜きで。あたしと尾奈くんの二人だけでだよ!!」
モモはちょっと黙り込んだ後、恥ずかしいことを一気に終わらせるかのように早口で俺を誘った。
俺とモモと猫川奈緒の三人ではしょっちゅう行動を共にしているが、奈緒抜きでモモと示し合わせて二人きりになるのは初めてのことだ。
しかもモモはそれを「デート」という素敵な響きで称している。
もちろん俺に異論などあろうはずがなく、
「えええっ!! 絶対のもちろんの了解ですっ! ありがとうございます! お願いします!……で、いつ? どこで?」
俺は衝撃で裏返った声で訊ねた。
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