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奈緒は口をぱくぱくさせて何か言おうとしたようだが、慌てすぎて言葉が出てこなかったのか、それとも下手に弁解しても無駄だとわかっているからか、結局声は出さずに、もっと緊急事態だとばかりに素早く股間を双眼鏡で隠し、その上を手で覆った。
裸身も陰毛もおまんこも、初めて見られるわけではないのだから、今更隠すまでもないだろうが。
さすがにオナニー姿は初めてだが、なんてったって俺は奈緒にフェラチオをしてもらったこともあるのだから、オナニーぐらい何でもないではないか。
と思ったが、問題はオナニーを見つかったことにあるのではなく、『何を見ていたか』にあるようだ。
「ねーねー、何見てたの? 何をオカズにしてたの? 中学校を見てたよね。中学男女の初々しい乳繰り合いでも観察してたのかな?」
モモはじたばた抵抗する奈緒の手から双眼鏡をもぎ取った。
いつもながら、普段は非力なくせにこんな状況の時だけは力が強い。
俺たちの高校は中学校に隣接している。
別に附属だとかいうわけでもなく、ただ単に隣り合っているだけであり、交流などは全くないのだが。
「出たな! ハイテクの申し子・猫川奈緒製作のウルトラ高性能双眼鏡! 熾烈な戦いの日々を思い出すね。あの頃は、まさかこんなに仲良くなれる日が来るなんて想像できなかったよね」
モモは双眼鏡を懐かしそうに撫でまわしながら、双眼鏡の機能について、誰に聞かせるともなく独言した。
「監視や覗きに絶大な威力を発揮する。ターゲットの姿を記憶させたら、可視範囲内にいる限りその人の動きに合わせてレンズがぐりぐり動いて、オートマチックで追ってくれる。オナニーで体がガクガクフラフラになっててもオカズの姿を逃さないよね。で、キミはいったい何を見てたのかな?」
モモは瞳をキラキラ輝かせた、好奇心いっぱいのすごくいい顔をして、双眼鏡を覗いた。
向かうところ敵なしで自信に満ち溢れた海賊船の船長みたいに誇らしく胸を反らせたポーズを決めて。
奈緒は「いやん」と言って赤面した顔を両手で覆った。
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