おれに優しく触れて

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でも、こんな物じゃ 暇潰しなんか出来ないのは 分かってた。 おれは箱を引き出しの奥に 戻し、布団を敷いて 寝るコトにした。 うーん、宗弥の匂いがする。 凄く心が落ち着いて、 興奮する匂い。 ヤバ…。 余計な事考えてた。 それは宗弥が 帰ってきてからだって! と、自分に言い聞かせながら 布団に潜り込んだ。 「きろ…起きろ!!」 はっ―! 気付いたら寝てたみたいだ。 布団から飛び起きると、 宗弥が枕元で 胡座をかいていた。 「おかえんなさい。」 「何故此処で寝てるんだ。 お前また学校…。」 溜息を吐きながら、 宗弥は手で顔を覆った。 「だって、学校きらい。」 おれは宗弥と向き合って 胡座をかく。 「言っただろう? 高校に行かなければ、 未来もクソも 在ったもんじゃないと。」 「だって…。」 「"だって"なんだ?」 おれがシュンと俯くと、 宗弥は頭を撫でながら 聞いてくる。 「学校に行っても 宗弥いないし、 セクハラ受けるし。」 「私が学校に 行ける訳ないだろう。 …って、今何て!?」 切れ長の目を見開き、 宗弥は驚嘆の声をあげた。 「だからー。 先生とか委員長とか、 おれにセクハラを…。」 ガッ。 瞬間でその細長い腕が おれの首へと伸び、少し強めに掴んだ。 「柚和(ユオ)。」 「は、はい?」 出た。 イライラしている時、 宗弥は首を絞める癖がある。 側に人がいない時は 自分の首を絞める。 おれはコレを『覚醒』と 呼んでいる。 ともかく宗弥は、 一度覚醒すると自分が 我に返るまで首を絞める。 だからおれが何とか しなければ、 首をもっと締め上げられる。 「宗弥、大丈夫だよ。 おれは宗弥だけの者 なんだから。」 宗弥はずっと遠くを睨む。 顔はこっち向いてるけど、 目の焦点が定まっていない。 こうなると名前を呼ぶしか、 方法が無い。 ギリギリと宗弥の手は 力を込めていく。 「宗弥!苦しい! 離して!宗弥、宗弥!」 宗弥が瞬きをした。 我に返ったんだ…。 「…すまない。」 首から手を離し、宗弥は おれを抱きしめた。    
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