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そんな人差し指の上で輝く、まだ生暖かい君を眺めていると。
ガチャ。
「うっ、うわっ!」
俺はとっさに指を背中に回し隠した。
『あらおはよう!
いつも遅刻してる君が、こんなに早く来るなんて、なにかあったの?』
佐々木さんだ。
「いっ、いやっ、ちょっと眠れなかったので、早めに来て掃除でもしてよーかなーなんて…
アハハ…」
ふいにでた理由がこれだ。
『助かるわぁー、課長もきっと見直してくれるわよ!』
佐々木さんは、そのまま自分の席に座った。
せっかく佐々木さんと二人きりになれたのに、君が気になってどうしようもない。
まず最初にせまられた選択は、君をどうするかだ。
このままティッシュにくるんでポイ…
なんて事はとてもじゃないが、もったいない。
かと言って、このまま指に付けておくわけにも当然いかない。
鼻の穴に戻し、キープしておくのも悪くはないな。
俺は悪い頭をフル回転させ、いろいろ考えた。
いきついた結果は。
とりあえず、まるめよう!
指でくるくるくるくる。
と、その時事件が起きた!
ポロッ。
君は指から離れ、真っ白な床の上に落ちた。
君の体の何倍もの高さから、君は落ちたのだ。
うかつだった…
自分の指の器用さを、過信しすぎた結果がこれだ。
なんと無力…
君は必死に俺に輝きを放ち、存在をアピールしてくれたのに。
俺は、その小さな小さな命を、死なせてしまった。
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