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屋根の次は、トラックが飛散した荷物。
それを越えてもまだ残骸の山は続く。
以前、この辺りは並木道になっていたが、突風に煽られ、折れた並木や電柱、看板等が無造作に山積みになっている。
その上を足場を探しながら進む。
車なら5分とかからない距離なのに…
そう思うと普段は何気なく見ている並木も恨めしく思えてならなかった。
どの位歩いただろう。
いつも通い慣れたはずの道は廃墟の山と化し、おおよそ人が住んでいた地区とは思えない程荒れはてていた。
あと一つ…この角を曲がれば保育園が見える…。
今のこの現状から察するにまともな形で残っているとは考えにくい。
もしかしたら建物自体吹き飛んで無くなってしまって居るかもしれない。
今頃になって来た事を後悔し始めた。
曲がり角が近付くのが怖い…。
現実をまざまざと見せ付けられるのが怖い…。
私はたまたま怪我もなく無事にここまで来られたが、保育園が、我が子が無事だと言う保証など何処にも無いのだから…。
重くなる足を無理矢理引きずるように前へ進む…。
いずれにせよ行かなくてはならないのだ。
そう自分に言い聞かせ足を運ぶ。
最後の角を曲がる…
顔が上げられない。
もし…さら地になっていたら…そればかりが頭を過ぎる…。
握った拳が恐怖に震える。膝が小刻みににガチガチと震える。
今まで体験した事のない恐怖が全身に襲い掛かる。
意を決し顔を上げる。
最後の悪あがきか、目は固くつぶったままだ…。ゆっくりと目を開く…。
薄く開いたぼやけた視界に建物が見えた…
あっ…た…?
もう一度をきちんと目を開いて見直す。
保育園がある!!
体が一気に軽くなる。
未だ続く瓦礫の山をさっきより心なしか足早に進んで行く。
建物は現存してはいるが、近づけば近付くほどその崩壊具合が把握できて行く。
ホール側の窓ガラスは全て割れている様だった。
教室はホールとは真逆の位置にあるので、もしかしたら無事かも知れない。
少しの期待を胸に更に建物に近付く。
壁には大きく亀裂が入り今にも崩壊しそうに傾いている。
今朝は何とも無かったのに…。
たった何発かの閃光がこの保育園を一瞬でこんなに廃墟にしてしまったのだ…。
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