閃光と爆風

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何が起こったのか皆目見当も着かない。 職場にはテレビは無い。ラジオはさっきの爆風で吹っ飛んで床に飛散している。 とっさに私は自分の携帯を取り出してテレビを入れた。 番組が全てニュースになっている。 どうやらテレビ局も状況が掴めて居ない様だった。 テレビのアナウンサーは皆一様に 「情報が入り次第随時お伝えして行きたいと思います。」 の連呼で埓があかない 。 皆が携帯を取り出し家族に連絡をとりはじめる。私も一旦テレビを消して電話をかけてみるが繋がらない。 それもそのはず。 その場に居た全員が携帯を使ったのだ。日本全国考えることは皆同じ。 つまり電話は混線し、サーバーはパンク状態。 当然誰の携帯も繋がらない。 「わち!帰らしてもらうわ!」 一人のおばちゃんが口火を切る。 おばちゃんは、半身不随の旦那を家に残し、仕事に来ているのだ。 旦那は、一人で歩く事も出来ないし、電話に出ることも出来ない。 仮に通じたとしても、相手が電話に出られないのでは安否の確認のしようがないのだから、当然と言えば当然である。 それを期に皆が口々に 「私も!!」「私も!!」と言いだした。 社長も、奥さんも、仕事している場合ではないと皆が帰る事を了承した。 「とにかく皆一旦帰りましょう!!ここはこのままにしておいて良いから!!」 と、奥さん自身も動揺して、少し声が甲高くなって居る。 「すみません!!お先に!!」 そう言い放つと、皆やりかけの仕事をそのままに、自分の手荷物を引ったくるように掴んで走った。 建物の外へ出て愕然とした。 私達の職場は、比較的高い建物に囲まれて居たので、直接的な被害は免れたが、辺りは直撃を受けた残骸でごったがえしていた。 足元には、何処かの屋根の一部や、サッシ、硝子等が散乱していた。 そして何より、数多くの倒木が駐車場迄の道を塞いでいる。 この現状で、果たして自分達の車は無事動かせるのだろうか…。 とにかく駐車場へ急いだ。 こんな時でも、お互いを思いやり、手を差し延べ、支えあい駐車場へ向かう。 心はとても急いて居るのに…。
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