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駐車場への道程は、アップダウンの激しいジャングルの様になっていた。
仮に駐車場まで行けたとして、車が無事だったとして、果たして道路は走れるのだろうか…。
やっとの思いで駐車場にたどり着いた。
何台かの車に木が覆いかぶさっている。
私の車は…。
ボンネットに、倒れた木の枝の部分が覆いかぶさり、いくつかのブロックが屋根に乗っている程度で、後は粉を吹いた様に白くうす汚れていた。
直ぐさま運転席のドアを開け、エンジンをかけてみる。
かかった!!
良かった!!
他の仲間の車を見渡す。
一人頭を抱えてしゃがみ込んでいる。
半身不随の夫をもつあのおばちゃんだ。
おばちゃんの車は、倒木の直撃を受け運転席側の窓と天井が押し潰されている。
この職場から一番遠い場所に住んでいるおばちゃん。車無しでは帰宅も困難。
おばちゃんは悔しそうに頭を掻きむしりながら嗚咽にもにた声で泣いていた。
その姿に、誰もが何とかしなくちゃ…!!と思った。
自分達も家族をかかえ、心は擦り切れるほど心配しているのに、どうしても助けたいと思った。
と言うより、体が勝手に動いた。
恩義とか、たてまえとか、そんな概念は全くなく、ただ助けなくてはいけない…そう思った。他の仲間も、自分の車の状態を把握して、おばちゃんにかけよる。
旦那さんの元に行かせてあげたい。ただその一心だ。
全員で力を合わせ、倒木を持ち上げる。そんなさなかにも閃光と爆音は止まない。
けれどそんなの構って居られない。
どんなに光ろうが、何が飛んで来ようが、おばちゃんの車を何とかしなくてはの一点集中。
しかし、ヤハリ女の力…倒木はびくともしない。
おばちゃんの悔しい雄叫びが、辛さをいっそうひきたてる…
その声を聞き付けて奥さんが走ってきた。
「うちの車使って!!」
そう言っておばちゃんの手をとり、車の鍵を握らせた。
驚いて顔をあげるおばちゃん。
「うちの車は車庫に入ってるから、多分大丈夫だから!」
そう言いながらおばちゃんの腕を引き、立ち上がらせた。
「ね!うちには、まだ後3台車があるんだから!早く旦那さんのとこに行ってあげて!」
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