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おばちゃんの顔がキリッと切り替わった。
「すまない!借りてくわ!!」
皆の顔が安堵に変わる。
ひしゃげたシャッターを力ずくでこじ開ける。
コレしかおばちゃんを助ける方法が無いのだ!!
おのずと気合いが入る!
誰からともなく掛け声をかけ、一気に持ち上げる。
その場に居た全員が一致団結した瞬間だ。
しかし、ひしゃげたシャッターは、なかなか思うようには空いてくれない。
やっとの思いで身の丈程のスペースが確保されギリギリ車を出すことが出来た。
おはちゃんの車が出たのをきっかけに、全員が自分の目的地へ向かって車を発進させた。
しかし主要幹線道路はほぼ壊滅状態だ。
こんな時小回りの効く軽は本当に便利だと思う。
障害物を匠に避けて進んで行く事が出来る。
爆風で飛ばされてきた残骸にまじり所々で車が路外に放置されている。
その様子を横目にみながら通過して行く。
もしこれが普段の日だったら車を降りて救助したであろう。
が、今は非情にならざるを得なかった。
一刻も早く、我が子の安否を確認するまでは、鬼と化す以外方法が無いと思もえた。
しかしそんな時間は長くは続かなかった。
何処かの家の屋根が道を塞いでいる。
二車線しかない道路のど真ん中にグシャグシャに折れ曲がり、更に壁らしき残骸もそこかしこに散らばっている。
その向こうには、大型トラックが横転し、道路に荷物を飛散させている。
飛んできた屋根に驚きハンドル操作を誤ったのか、はたまたぶつかったのか。しかし、そこに運転手の姿は見当たらない。
既に避難したようだった。
仕方が無い。ココからは車を置いて歩くしか他に方法が無い。
車を道路の左端イッパイイッパイに寄せエンジンを止めキーを抜く。
本来は、抜いては行けないとモノとわかっているが、娘が見つかった時、車で非難するためにも、他の誰かに盗られるわけには行かないのだ。
私は、鍵を握りしめて残骸を乗り越え前へ進む事にした。
普段、仕事以外ははヒールを履いているが、今日は仕事なので、スニーカーを履いていた。
ある意味不幸中の幸である。
硝子の破片に触れないようにひしゃげた屋根を渡る。
子供の頃よく屋根に昇って遊んだあの感覚を思い出しながら一歩一歩着実に前に進む。
今ここで怪我をしては元もこもない!!
自分に言い聞かせるように呟きながら前へと進む。
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