訪問者-ある土曜日の事-

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「1人暮らしにもだいぶ慣れてきたな」 ある土曜日の事、だだっ広い一軒家で、ボサボサ髪をそのままに、お気に入りのTシャツとスウェットを履き、朝食のハムエッグを焼きながらキッチンでそう呟いたのは、先月、高校生になったばかりの少年、七森幸斗(ななもりゆきと)だ。 身長は170㎝位だろうか、細身ではある。 都内の名門高校に通う為、親元を離れ1人上京した幸斗。 過保護な親バカ2人には「1人暮らしなんてダメだ!」などと言われていたが、その時たまたま帰郷していた祖父の鶴の一声であっさり事は解決した。 しかし祖父から幸斗はある条件を言い渡される。 それが、都内に建てた一軒家に住む事、だった。 「学校からも近いし、何より家賃がタダってのは良いよなぁ」 1人暮らしの高校生には願ったり叶ったりだ、食料も毎週両親が送ってくるし、さしたる不自由はない。 しかし孫にポンと一軒家を与える祖父とはいったい何者なのか。 今現在2021年における幸斗の祖父はロボット工学の権威として称えられ、海外にも会社を持ついわゆる大富豪なのだ。 しかし孫には甘い、これは案外どこの家庭にも言える事だ。 できたてのハムエッグと、トーストをリビングに置いてあるガラスの小さなテーブルに置くと、幸斗はソファに座りテレビのリモコンの電源ボタンを押した。 流れてくる朝のニュースの音楽。 最初の見出しは最近更に増加傾向にある殺人事件の話題だった。
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