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「じゃあ何か!? あのテレビのガイノイドはブラフで本物はあの子達って事か」
『そうじゃ、今のところライバル会社に見せる手の内なんぞ、儂の中の二世代前の技術で十分なんじゃよ』
電話の向こうの祖父は幸斗の問いにそう答えると、不適に笑った。
会社として向上するためにライバル会社の存在は必須。
しかし圧倒的な差を見せつけると、そのライバル会社が戦意を喪失しかねない。
だからメディアで発表するのは、ライバル会社達より少し上の技術を使った商品だけだ。
「ならなんだあの子達は」
『ん? 1人暮らしは寂しかろうと思っての、それに――』
「寂しかねえよ、で? それに、なんだ」
『儂の今の限界を知りたくての』
リビングから廊下に出て再び玄関へと向かう途中、祖父のその言葉に幸斗は足を止めた。
祖父がそう言った時、一瞬声のトーンが下がった気がした、寂しそうに感じたからだ。
『儂はこれからアメリカの本社に戻らにゃならんから、あの子らをよろしくな』
「おい待てよ! 引き取るなんて言ってねぇぞ!」
『幸斗』
「な、なんだよ」
再びあの声だ、低く悲しそうな声。
罵声も収まってしまうというものだ。
『あの子らは夜伽も出来るように設計しとるから寂しかったら――』
「死ねえ! クソエロジジイ!!」
祖父の言葉の途中で怒鳴り携帯の電源を切る。
危うく投げて壁に叩きつけそうになるのを幸斗は必死にこらえた。
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