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一人の少女が小さな街の駅に着いた。
周りの人達はその少女の姿に驚きを隠す事は出来ないでいた。
少女は綺麗な銀髪を腰下迄伸ばし黒いドレス姿でいるのだから目立たない筈は無い。
「なんだ?あの娘は」
「綺麗な髪~サラサラしてる」
だが目立つ理由は他にもう一つある。その肩に掛けたバッグである。
バッグだから目立つ事は無いだろうと思うのは当然である。そう、それが普通のバッグであればの話し。
少女が肩に掛けたバッグは身の丈程もあるのだ。
「んしょ。駅からすぐってあったよね?確か地図が…あったあった♪」
紙の切れ端に手書きの地図が描いてある。実に簡略化されてあり必要な事以外は描かれていない。
「ん~、すぐそこなんだ」
少々重気に担ぎ直して歩き始めた。
まだ湿気の残る風が長い銀髪を揺らした。
「向こうと比べるとちょっと湿気があるのね」
「んと、ここだよね?」
地図と一件の家を見比べていた。
「ごめん下さぁい。何方かいらっしゃいますかぁ?」
勿論この家に他の誰かが住んでいないのは百も承知している。
相手―――つまりここの家人に自分だと悟られない為だ。
「ふぁい、どちら様…?」
「久しぶりだね、?」
「ん…?あれ?もしかして――亜璃…」
玄関を開けた男が少女に気付いたのと同時に――
ギュッ
「―紗、ちゃん!?」
亜璃紗と呼ばれた少女は銀髪を羽が舞うかの様に靡かせ男の首に白く細い腕を廻しハグした。
男は突然の出来事に驚きはしたものの、すぐに穏やかな表情になり少女を降ろす。
「遠い所お疲れ様、亜璃紗ちゃん」
「久しぶりだねお兄ちゃん、元気だった?」
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