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ここは白光の神の住まう城。
そこのある一画でシルクは静かに読書をしていた。
そして、召使い達はそれを遠巻きにチラチラ見ては、なにやら、コソコソと会話を繰り広げているというもう一つの奇妙な光景も、そこにはあった。
実は彼自身気付いてないが(もしくは、気付いているが、あえてほうっているのか)彼は、城内の一部から『冷静沈着な王子』と言われ、恐れられたり、崇拝されたりしているのだ。
しばらくして、シルクが周りから感じるその視線に苛立ちを抱き始めたちょうどその時、風に乗ってシルクにとって、聞き覚えのある歌声が届いた。
すると、彼は読んでいた本を消して、歌声のする方へ心持ち急いで向かった。
「…ティア、あの歌声は、やはりあなたでしたか」
シルクがそう声をかけると、歌声の持ち主であるティアが、彼のほうを振り返り目を一瞬見開いて、驚いた。
「…シルク?どうかしたの?なんか息少し荒くなってるよ!?」
「いえ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。自分の鍛練が足りてなかっただけですから…」
自分の目の前で慌てるティアを宥めつつ、シルクは苦笑して言った。
すると、ティアは急に首をかしげて、疑問を口にした。
「そういえば、シルク、息が荒いってことは、私に急ぎの用事でもあったのかな?」
「いいえ、特に何かあったわけじゃないんです。
ただ、ここの近くで本を読んでいたら、歌声が聞こえてきたので誰のものか気になって歌声をたどっていったら、ここに着いたんです(本当はティアの歌声に反応して来てしまったんですがね)」
シルクが内心我ながら情けないと苦笑していると、ティアが彼の腕に触れて首をかしげつつ、苦笑した。
「そっか…ごめんね?読書の邪魔しちゃって…」
「いえ、その時は集中力が途切れていたので、気にしないで下さい(これは…アングル的に上目遣いに見えるんですが、誘ってるんでしょうか…)」
ティアの仕草にシルクがどうリアクションすればいいのか迷っていたその時、いきなりシルクの視界が遠くなった。
……どうやら、シルクの副人格のブラッドが出てきたようだ。
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