好き、だから

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「りょ…う」  一瞬亮が何を言っているのか分からなかった。そしてその言葉を疑った。 (亮が俺の事を…好き?)  確かに亮はそう言った。それは恋愛感情としてなのだろうか。俺と亮は男同士。それ以上に血の繋がった実の兄弟でもある。  そこから導き出されるのは恋愛感情ではなく、兄弟としての愛情であって。 「亮、お前なんか勘違いしてる…俺達は兄弟で――…」 「兄弟だから何?兄貴、俺がこんなに思い伝えているのに、信じてくれないの?…俺は兄貴を恋愛の対象として、好き、なんだよ」  俺の疑念は確信へと変わった。亮は俺の事を恋愛感情で“好き”なのだ。男の俺に、そして兄弟の兄として。  その亮の言葉だけではない。俺を見る亮の目や、先程のキスにしたってそうだ。全てが亮の言葉を真実だと告げている。 「亮…俺は…」  俺は答えなければいけない、亮のその思いに。そして亮の兄貴として、正しい答えを言わなければいけないのだ。 「――俺はお前の気持ちに、答えるわけにはいかない。兄弟として、その感情は許されるべきではないんだ」  それは自分でも驚くほどに落ち着いた声だった。あんなに擦れ震えていたのに、今になっては微塵も感じられない。それどころか清々しい気分でさえある。  なぜなら、こんな亮を今まで見た事がなかったからだ。こんなに心を開いてくれた事はあっただろうか。その内容がどうであれ、亮の人間染みた部分が見る事が出来たのだ。  しかしそんな俺の思いとは裏腹に、亮の心中は穏やかではなかった。 「…兄弟、兄弟って…。俺さっき言ったよね。もう抑えきれないだ。兄貴の理屈染みた考えなんて俺には関係ないよ」
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