好き、だから

26/26
287人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
 悲しげに、苦しげに囁く声。自嘲気味に笑う亮に、俺の胸がズキリと痛む。 「――兄貴」  俺を呼ぶ。俺の目を真直ぐに見つめて。 「大好き、兄貴が大好きだよ」  朗々と、堂々と。何の躊躇いもなく、そう言った。その囁く声と共に、俺の唇に柔らかいものが触れる。  先程とは違った優しく、甘いキス。優しく撫でられるように吸われ、閉ざされた口膣内を探るように、歯列を舐め上げられる。 「…っん…あ」  吐息が漏れ、口を開く。すんなりとキスを受け入れた俺に亮は一瞬目を見開くが、すぐに目を細め柔らかい舌が差し込まれる。  俺は亮のキスを受け入れた。しかし厳密に言えば、受け入れたのは“キス”だけであって。亮の気持ちを受け取ったわけではない。考えるまでもなく、亮の気持には答えられないし、何よりも、早くこの状況を終わらしてしまいたいというのが、俺の本当の心境だった。  もう限界だ、と亮に伝える。そうすればゆっくりと唇が離れ、二人の間を銀の糸が紡ぎ、俺の浅く速い息継ぎのせいで、それがプツリと切れる。 「りょ…ぅあ…っ!?」  突如身体に走る甘い痺れ。何事かと驚き、己の身体に視線を移せばいつの間にかシャツのボタンは外れ、俺の胸は露になっていた。驚かされたのはそれだけではない。亮の片手が肌蹴た俺の肌を撫でていたのだ。  腹筋の辺りから肋へ、そして脇腹へと這う手に俺の身体はピクリと跳ねる。 「ちょ…っ亮、やめろ…!」  しかし亮はニコリと微笑むだけで、撫で回る手は止まらない。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!