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悲しげに、苦しげに囁く声。自嘲気味に笑う亮に、俺の胸がズキリと痛む。
「――兄貴」
俺を呼ぶ。俺の目を真直ぐに見つめて。
「大好き、兄貴が大好きだよ」
朗々と、堂々と。何の躊躇いもなく、そう言った。その囁く声と共に、俺の唇に柔らかいものが触れる。
先程とは違った優しく、甘いキス。優しく撫でられるように吸われ、閉ざされた口膣内を探るように、歯列を舐め上げられる。
「…っん…あ」
吐息が漏れ、口を開く。すんなりとキスを受け入れた俺に亮は一瞬目を見開くが、すぐに目を細め柔らかい舌が差し込まれる。
俺は亮のキスを受け入れた。しかし厳密に言えば、受け入れたのは“キス”だけであって。亮の気持ちを受け取ったわけではない。考えるまでもなく、亮の気持には答えられないし、何よりも、早くこの状況を終わらしてしまいたいというのが、俺の本当の心境だった。
もう限界だ、と亮に伝える。そうすればゆっくりと唇が離れ、二人の間を銀の糸が紡ぎ、俺の浅く速い息継ぎのせいで、それがプツリと切れる。
「りょ…ぅあ…っ!?」
突如身体に走る甘い痺れ。何事かと驚き、己の身体に視線を移せばいつの間にかシャツのボタンは外れ、俺の胸は露になっていた。驚かされたのはそれだけではない。亮の片手が肌蹴た俺の肌を撫でていたのだ。
腹筋の辺りから肋へ、そして脇腹へと這う手に俺の身体はピクリと跳ねる。
「ちょ…っ亮、やめろ…!」
しかし亮はニコリと微笑むだけで、撫で回る手は止まらない。
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