混沌の霧

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階段を進んだ先には エレベーターがあり、そこは血だらけだった。 「・・・・・・・・・・」 じっと見つめている私を 尻目に 最初の八人は乗っていった。 「もしもし・・・・・・聞こえるか?・・・・・・状況は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・分かった。 極力、戦闘は避けろ。 目標周辺が 危険だと感じたら最優先は 身の安全を考えろ」 ・・・・・・ピッ! 凛さんは わたしの方を見ると脇から 黒い銃のような物を出してきた。 「上は一応 大丈夫だと言っていたが 何があるか分からない。 これは 改造した銃で、引き金を引くと 釘が飛ぶようになっているだけだから 女でも使える。 持っておけ」 「・・・・・・・・」 私は 恐る恐る手に取ると 同時にエレベーターが到着した。 「これは仲間だったやつの 血だ。 つい、この間までな」 「この間までって・・・・・・じゃあ!」 「いまは 多分街中を徘徊しているよ。ほぼ人間ではなくなった 姿でね」 いま一瞬、辛そうな顔を 全員浮かべたと、私は感じていた。 「彼は工藤 辰樹(クドウ タツキ)って言ってな、いつも おどおどしている恥ずかしがり屋だった。 でも三ヶ月ぐらい前に、私を含めた 六人がボルターの集団に出くわして、皆が必死で エレベーターまで逃げた。 だが、エレベーターの扉を 無理矢理こじ開けてきた ボルターがいて、弾も尽きて半分諦めかけた時 彼は、ボルターに 自ら体当たりして 自分ごとエレベーター外に」 「ボルターは 目に映る者を最優先に狙うから。 仲間の為に 犠牲になろうとしたんだな」 「でも、生きた者は 生きれなかった者の分まで 生きるそれだけよ」 仲間と 呼べる人が死んで 割りきれるほど、人は都合良くは 出来ていない。 私は何も言わなかった。 何も言えなかったのほうが正しいかな。 私はいじめを受けて、仲間がいるから 耐えられるということを 良く知っている。 私はただ両手で 持った銃をギュッと握った。
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