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「さ・・寒い・・・」
こっちの世界の季節は私達のいた世界と一緒のようで、コンクリートの割れ目からときどき吹く風がとても冷たかった。
「・・剣次くん、・・・・・他の人達は?」
火の番をしている剣次くんは木の板を持ったまま、こちらを見た。
「とりあえず、全員無事だ・・・・・いま、白木が他の班と定期的に連絡してる。
・・・・・絵里達の班は 比較的中央ビルに近いから、中央ビル近くの建物に 移動して、周囲の様子を見て、俺達の 退路を確保するそうだ」
「良かった・・・」
私は立ち上がり、ローブを凛さんにかけ、火の近くに寄った。
「・・・・・・・ありがとう、剣次くん。あと、ごめん」
「なにが?」
私があの時、足手まといになっていたのは明らかだった。
私を誰かが 運びながら周りの安全を確認して、逃げてきたのだから。
「だ・・だって、あの時・・・・・私、気絶しちゃって、・・・・・気絶した私を庇って、誰かが傷付いたかもしれないし」
私は体育座りのまま、寒く、身を小さくして 膝に顎と手を乗せた。
「バ-カ・・・・・・・・こんな世界に来て、いきなり何でも出来るやつなんて オカシイだろ、そんな奴・・・・・
大体、田宮みたいな、や・・優しぃ・・・・・いや、文化系な奴が・・・・・・
・・・・ハァ・・・とにかく気にするな・・・寝てろ」
「う・・うん」
そう言うと、剣次くんは再び、目にタオルを被せた。
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