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一柳 陽杜(いちやなぎ・はると)。
それが僕の名前。
高柳 唯杜(たかやなぎ・はいと)。
それは従兄弟の名前。
兄弟の居ない僕らは本当の兄弟のように仲良しで、
母親が迎えに来るまで学校の授業が終わると一緒に遊んでいた。
陽杜『唯杜~!遊ぼう!』
唯杜「うん!」
双子のようにそっくりだった僕らは家も隣りで、
両親よりも長い時間一緒だった。
唯杜と一生友達で居られると信じて疑わなかった。
高校入学を祝う日に、
唯杜が突然倒れてしまうまで。
病院で僕は知る。
唯杜には好きな女の子が居たことを。
ようやく相手に気持ちを伝えたのに。
唯杜の命は儚くて。
18歳まで生きられないことを知らされたのは、
唯杜が17歳の誕生日を迎えた日だった。
唯杜が好きな女の子。
僕は会わないように、
彼女が来る日は時間をずらしてお見舞いに来ていた。
残り少ない時間を、
彼女と過ごせるように。
だから僕は面会時間直ぐの時とギリギリの時間に唯杜に1日2回は会いに来ていた。
唯杜「陽杜…頼みがあるんだ」
17歳の誕生日からずっと体調の悪い唯杜。
ぬけるように白い顔は、僕の胸を苦しめる。
陽杜『何?僕に出来ることなら、いいけど』
唯杜「陽杜にしか頼めない。僕と同じ顔の……
僕の弟の君にしか」
最後の言葉は声が小さくて。
唯杜が真実を伝えてくれたのに気付かなかった。
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