彼と彼女と俺、桜

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がたん、とキョウが立て肘を滑らし体制を崩して椅子から落ちた 『だーいじょぶかあ?』 地面に膝を付き俯いたキョウを覗きみる 長い前髪が顔を隠してよく見えない 頬を抑えキョウは声を荒げ怒鳴ってきた 『てめーっ!』 『な、なんだよ?』 『なんでっ…そんな…簡単に…』 『え?』 キョウの怒鳴り声がどんどん小さくなっていき、仕舞いには下を向いてしまった 『すき、とか…』 え、 『何とぼけた顔してんだよっお前が言ったんだろ!』 え? 『やっぱりおれが好きとかなんとか』 『あああああああ!』 俺の口は勝手に人の考えを溢してしまうほど緩んでいるみたいだ… 『えー…っと…』 『…んだよ只の冗談ってか?』 『はい、冗談です…』 『っ…てめぇ!』 『やっぱりなんかじゃなくて』 拳を振り上げたキョウをしっかりと見つめる 『真剣にキョウが好きだ、』 夕陽よりも赤く染まってくキョウ 俺の頭上目がけて高速で落ちるはずだった拳が、行き先を見失ってさ迷いぽとりと地面に添えられた 『お、お前本気…?』 『ま、そうなるよな』 『え、いや、その…』 頑張って言ってみたけど… 『す、好きって…?』 『き、きもいよな!』 俺だって男に告白されたら引くだろう キョウにならかまわないけど… 『お…おれも、』 『おれもお前のこと好きだよ!』
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