彼と彼女と俺、桜

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キョウが遠い誰かに呼び掛けるような大きな声で言った 俺が好きだと、 そうして俺はキョウと両思いだと知り、恋人同士になった でも恋人同士になったからと言って大して毎日に変わりはなくて、 いつも通り、双子と俺の三人で青春を謳歌している 「だいたいさーおれと付き合ってもお前に得ってないじゃん」 「いやそうでもないけどさ」 「女みたいな体じゃないし、人には内緒じゃん?」 「まあ…」 「やっぱさあ…おれじゃ無理じゃないの?」 「無理ってなにが」 キョウが椅子に凭れ、ぎぃっと音がする 目を伏せ、さらりと落ちた前髪で向こうは見えない 「おれとお前」 「なんで」 「…怒んなよ。だってさー男が女と付き合って楽しいのは異性だからだよ」 前髪をくるくる指で絡めて遊ぶキョウをじっと見つめる 「自分と違って、柔らかくてふわふわだから楽しいんだよ。」 「お前だって柔らかくてふわふわじゃんよ、髪とか」 「これはただの癖毛!もっとオーラっつの?全体の雰囲気がだな…」 「大丈夫、お前もそんなんだからさ」 「そーゆーんじゃなくて!とりあえず男と男じゃまずいんだよ!」 「だからなんで」 「…お前だってそう思ってんじゃねーの?」 伏せた顔が不意にあがり、ちらりと覗く瞳がこちらを睨む 「別に思ってないよ」 「じゃあ、なんで…なんで…」 「?」 言い淀むキョウは視線を横に泳がせこちらを見ない 「普通のカップルがするようなこととかしないんだよ…」 残念ながら俺は女の子と長く付き合うこともなく、通常のカップルが行う行動をしたことがなかった 「普通のカップルがすること…」 キョウはきっと俺が他の女の子を気にしてたから怒っているんだと思っていたけど、 どうやらそれだけでもなかったようだ 「じゃあキョウはどうしてほしいんだよ?」 「どうって…」 普通のカップルのすることが、 あんまり普通じゃない俺らでも できることなら俺は別にいい メールとか電話とかカップルみたいにあほほどやったっていい けれどキョウの返事はそんな幼稚な考えを飛び越していて、俺は間抜けみたいで恥ずかしくなった
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