1人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
今日も雨だから屋上は無理そうだな、と跳ねた頭を直そうともしないキョウは言う
上から見たらコの字型の校舎は屋上が広く、生徒も自由に出入りできる
前に別の学校で転落事故が起きてからは
市の教育委員会の会議により
一時立ち入り禁止になったものの、
天体部の全米が涙する熱弁により
背の高いフェンスの設置、
転落防止を心掛けることを条件とし
再び解放されることになった
「こんなに雨ばっかじゃ俺の熱弁の意味がねーじゃん」
ポケットにある屋上の鍵を触りながら教師陣との討論を思いだす
事故が起きる前から屋上では
天体部が天体の観測を目的とした活動を行っていた
土曜日には屋上の片隅にある、
旧物置小屋、現天体部部室に泊まり込み夜空を見上げていたのだ
ところが事故後、屋上は閉鎖、
天体部は活動が危ぶまれ廃部の危機に直面した
そこで天体部部長が国内の作文コンクールに見事受賞した一年生だった俺に是非抗議文を、と言い出したのだ
俺としては星を見れればなんだってよかったが、先輩に頼りにされているのが小気味よかったから二つ返事で承諾した
しかし事態は進展し、全校集会で討論することになった
そのころには部長だけでなく生徒達もヒートアップして、一丸となって解放運動に貢献したのだ
おかげで屋上は自由に使えることになったものの、
俺は次期部長として天体部責任の屋上管理を任されることになった
屋上の清掃と鍵の施錠、
この任のために毎日屋上に通っている
梅雨のこの時期は屋上に出る生徒なく、
鍵開けのためにわざわざ屋上まで行く必要はないが、
毎日そこで昼飯を食べるので
雨の日でも通うことになっている
「おれも見たかったな、お前の熱弁」
「いやいやあれはすばらしかったね、うん」
二年生になって引っ越してきた双子は屋上解放運動に参加していないのだ
「俺のかっこいいとこ、見せてやりたかったぜ」
最初のコメントを投稿しよう!