彼と彼女と俺、桜

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「お前にかっこいいとこなんてあんの?」 「こらこら失礼なことを言うんでないよ」 確かに俺はイケメンというカテゴリーに分けられる顔ではない かといってブサイクということもないと自負している まあ、並大抵な顔だ 屋上につながる階段を登りきると少しだけ広くなった踊り場にたどり着く アルミっぽい材質で作られた扉の窓から屋上を伺うが雨が強くて出れそうにない 「やっぱ梅雨は活動できそうにねえな」 踊り場に座り込み弁当を膝に置く キョウも同じく座り込むがその手に弁当はない 「ソウおせーな」 キョウの片割れ、奏子は別のクラスだが昼飯はいつも一緒に屋上で食べている クラスに友達が居ないとかと不安に思うがそういうわけでもないらしい 明るくて人懐っこい性格の双子は誰とでも仲がいい 頭もいいから教師にも好かれているだろう 忘れっぽいキョウのためにソウがいつも弁当を持ってきてくれる というよりキョウはソウが弁当を 持ってきてくれるとわかってるから 弁当を持ち歩いてないんだと思う 「待ったー?」 かんかんと階段を登ってくる音と ソウの声が聞こえてきた 短めのボブはまるっとしていてキョウの跳ねた頭に少し似ている 平凡な顔の俺とは違い双子は美形だ 睫毛は長いし二重の瞳は大きいしややアヒル口も愛くるしい 双子はよく似ている、というかまったく同じ顔つきなのに ソウは可愛くてキョウは格好いい。 一体何処からその違いがくるのか、謎だ 「キョウ、お弁当」 「あんがと」 弁当を手渡したソウは階段に腰掛けピンクの弁当包みを広げる キョウも受け取った青の弁当包みを広げて食べはじめる 「あ、あたし今日委員の仕事があるから先に帰っといて」 双子と俺は登下校を共にしていて、 自転車通学の俺は徒歩圏内の双子と途中まで一緒に帰っている 「何時くらいに終わんの?」 ソウは図書委員をやっていて、委員は交代で学年図書の貸出と返却の窓口をやらないといけない 今日はその日のようだ 「さあ?でもそんなに長くはかからないと思うな」 「どうせ暇だし待っとくけど?」 「あ、そう?じゃあキョウも待っててね」 「そーする」 この双子はとても仲がいい 喧嘩しているのをあまり見ない この前に三人で行った祭りで、 はぐれたにも関わらず すぐに合流出来たところを見ると この双子はテレパシーが使えるに違いないと俺は踏んでいる
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